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《ハマナシ》
 バラ科の落葉低木。ハマナスともよぶが、これは東北地方の訛りが一般化した俗称である。匍匐(ほふく)枝で繁殖する。高さ1〜1.5メートル。茎に太い刺と細く鋭い刺を密生し、刺の表面にも毛がある。若枝は軟らかい刺が多い。葉は長さ9〜12センチ、深緑色で半光沢があり表面は無毛、しわが葉脈に沿って網状にへこみ、葉裏に突出する。
 花季は6〜7月、続いて少しずつ返り咲きする。花は枝先に1〜数個つき、強い芳香がある。花柄は太くて短く、長さ1〜3センチで小さい刺がある。花冠は鮮やかな深紅紫色で、径6〜10センチ。花弁は5枚で平開し、広倒卵形で先端はへこむ。雄しべは多く、黄色が目立つ。花柱は離生するが基部は合生し毛がある。果実葉扁球形で無毛、まれに刺がある。初め緑色であるが、次第に橙色に変わり、7〜8月、紅色に熟す。北海道から日本海側は島根県、太平洋側は茨城県まで分布する。
 根皮は昔から絹糸を黄褐色に染めるのに用いる。
SONY 『日本大百科全書』 より