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タンチョウ(丹頂)Japanese crane 、学名:Grus japonensis 、鳥綱ツル目ツル科の鳥
 日本の鳥のなかでも姿がもっとも優美であり、また「ツルは千年」の言い伝えから、古来長寿やめでたいことのシンボルにされている。全長約1.4メートル。体は白色で、眼先、のどから頸側にかけて黒く、頭頂に赤色裸出部がある。次列・三列風切は黒く、飾り羽状に長く伸びて、尾の上を覆う。このため、一見尾が黒いようであるが、尾羽は白い。シベリア南東部、中国東北部、北海道の釧路・根室地方で繁殖する。大陸のものは冬期に朝鮮半島、中国東部に渡るが、北海道では留鳥として少なくとも384羽(1985調査)が周年生息している。しかし、明治維新以前には、繁殖しているものほかに、各地に冬鳥として渡来するものが多かったといわれている。
 広い湿地に住み、種子、芽、若根、穀物、水生の小動物などを食べている。湿地の中にアシや枯れ茎を積み上げて、直径1メートル以上、高さ70〜80センチに及ぶ大きな巣をつくり、一腹2個の卵を産む。抱卵雌雄交代で行ない、抱卵期間は約33日。雛は黄褐色の綿毛に覆われ、2個の卵から一羽だけ生き残ることが多いようである。各種のディスプレーのなかでは、ダンスと鳴き合いがよく知られていて、とくに春先によくみることができる。
 北海道では、1952年(昭和27)の冬、猛吹雪のためタンチョウが飢えそうになったのをきっかけに、毎冬トウモロコシの餌まきが行なわれるようになり、その結果人家近くにもすむようになった。こうしたことから、タンチョウ保護に対する一般の関心も高まり、また58年には釧路市に丹頂鶴自然公園が開演、タンチョウを身にくる観光客も増えた。52年タンチョウと生息地は特別天然記念物に指定され、64年に北海道鳥、67年区域を定めず特別天然記念物となっている。なお、タンチョウヅルとも呼ばれるが、和名はタンチョウというのが正しい。
   SONY 『日本大百科全書』 より