新2000円札の特徴

《新2000円札のデザイン》
 


・最新の偽造防止技術を盛り込んだ2000年7月発行のD2000円札、その表面には那覇の主礼門が描かれている。
・主礼門は、沖縄、那覇市の首里城の正面にある門で、尚清王の時代(1527〜55)に建てられた赤瓦葺の2層の屋根をもつ門。門の周囲には熱帯、亜熱帯の常緑樹、カジュマル、椰子の木、ディゴの木などが生えている。全体のデザインが上手く調和した繊細で様式美に優れた建造部である。昭和8年に国宝に指定されたが、第二次大戦中に戦災で破壊され、昭和33年に復元された。現在は沖縄県の指定文化財となっている。


新2000円札の裏面は今から1000年前の平安時代に記された古典文学「源氏物語」にちなんだ図柄として、「源氏物語絵巻」の鈴虫の場面から「冷泉院と光源氏の対座」「詞書の冒頭部分」、更に作者の紫式部にちなんだ「紫式部日記絵巻」の中の図柄を描いている。
・鈴虫の場面とは、十五夜の夕暮れ、入道の宮の屋敷で光源氏が琴を弾いていると、蛍兵部卿や夕霧(光源氏の子)など数人の殿上人が訪れ、鈴虫の宴が催された。そこへ冷泉院から月見のお招きがあり、一同揃って院の御所に参上する。この月見の宴では、実の親子である光源氏と冷泉院が対座し、しみじみと語っているが、原画では、そのそばで夕霧らしい人物が庭に向かって笛を吹く秋の情景が描かれている。
・鈴虫の詞書は「源氏物語絵巻」の中の文章の部分であり、原文の中から文章を抜粋して、絵の内容を補足説明するものである。次の10行の一部分が抜粋されてお札に描かれている。
すすむし、十五夜のゆふくれに仏のおまへ、に宮おはしてはしちかくなかめ、たまひつつ念珠したまふわかき、あまきみたち二三人はなたてま、つるとてならすあかつきのおとみつ、のけはひなときこゆさまかはりたる、いとなみにいそきあへるいとあはれな、るにれいのわたりたまいてむしのね、いとしけくみたるるゆふへかなと
・紫式部は中級の貴族であった越前守・藤原為時の娘として生まれ、藤原宣孝と結婚し、女子・賢子を産んだのち夫と死別。その文才を高く評価していた時の権力者・藤原道長の推挙により、一条天皇中宮・彰子(道長の長女)の局に勤務した。「紫式部日記」はその在任中の1008年頃の作品である。

・新2000円札は極く最近になって開発された「ダブルオフセット・ザンメル凹版印刷機」で刷られている。


《表面の偽造防止対策》


・凹版印刷(表全体):偽造防止のため、印刷された凹版インキは3次元的に盛り上がっており、ごく細かい線や点線まで表現された印刷方式である。
・かごめ状模様(正面左):コピー機や商用オフセット印刷による偽造を防ぐ為に、異なった中間色の模様を精緻に美しく構成し、組み合わせた模様である。
白黒透かし(中央):精緻でシャープな日本独特の白黒透かしの技法を用いており、お札の用紙に「守礼門」の模様が透き入れされている。
・潜像模様2000(左下):お札を眺める角度を変えると複雑な凹版印刷の彩紋模様の中に隠れている「2000」の文字が浮き出てくる潜像模様である。
光学的変化インキ2000(右上):お札を傾けて「2000」の数字を眺めると、インキの色が青緑色から紫色に変化するカラー変化インキを用いて印刷されている。
パールインキ(両端):お札を傾けると、人間の目ではピンク色の光沢が良く見えるが、コピー機やスキャナーでは再現出来ない特殊なインキの模様である。
特殊発光インキ(全体):暗い室内で特殊な波長の紫外線を照射すると、「総裁之印」の印章がオレンジ色に蛍光発光したり、模様の一部が黄緑色に蛍光発光する特殊インキで印刷してある。
オフセット・マイクロ文字:コピー機による複写が出来ない様に、文字の高さが360〜700ミクロンの微小文字で「NIPPONGINKO」の連続文字が印刷されている。
凹版マイクロ文字:コピー機による複写が出来ないように、文字の高さが220〜250ミクロンの細かい「NIPPONGINKO」の文字を連続して凹版印刷している。
・凹版識別マーク(左右下):目の不自由な人の利便のために、凹版インキを盛り上げて3つの円形により点字の「に」を図案化して2ケ所に印刷してある。
・特殊な記番号:偽造防止のため、お札専用の記号と番号を使用して、凸版印刷方式で連続した2〜3桁の記号と6桁の番号が組み合わされている。


《裏面の偽造防止対策》

・特殊な凹版印刷(裏全体):凹版印刷による人物の衣装の上に、一見すると「詞書」の凹版文字を重ねて印刷したように見える特殊な凹版模様
凹版マイクロ文字:一見すると単純な凹版線画のように見えるが、ルーペで拡大すると、「NIPPONGINKO」の文字が250〜270ミクロンで連続凹版印刷されている。
オフセット・マイクロ文字:コピー機による複写が出来ないように、文字の高さが330〜500ミクロンの微小文字で「NIPPONGINKO」の連続文字を印刷している。
・特殊なお札の用紙:マニラ麻など特殊な材料を用い、独特の手触りと色調を持たせた、丈夫で偽造できない特殊な紙幣専用の用紙を使っている。
・唐草模様:お札の品格を高め、偽造防止に役立てるために使用されている蔓草のからみ這う形を描いた飾り模様である。
・レリーフ模様:オフセット印刷の地模様により印刷した「2000」の数字が特殊な技法により、あたかも盛りあがったように見える。
潜像模様NIPPON(右端):単純な平行線のように見えるが、お札を眺める角度を変えると、潜んでいる「NIPPON」の文字が現れる特殊模様である。
・彩紋模様:お札に品格を与え、また偽造防止効果を高めるために使用している複雑で美しい、連続した幾何学模様である。
・表裏合計22色の多色刷り:偽造防止のため凹版印刷、地模様のオフセット印刷、印章、記番号を合せて表15裏7色で印刷されている。

以上は、大蔵省「お札と切手の博物館」資料を参考としました。(新宿区市谷本村町9−5、03-3268-3271)

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