マル秘インド・スナップへ

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紙幣が出来るまで

《インド紙幣の特徴》


・インド紙幣の製造工程を説明する前に、インド紙幣の特徴を紹介する。先ずはインド紙幣に共通するもので中央上下の50ルピー紙幣により@からEまで。FはEに相当する10ルピーの部分で、Gは100ルピーの部分。
・次に右側上下の100ルピー紙幣により、偽造防止手法として採用されている部分をH〜Nで説明する。
・最後にOが10ルピー紙幣のみの特徴だが、比較対象のために下の写真は一番最初に掲げている。


・新しい二つの紙幣製造工場建設に合せてインド準備銀行(RBI)は1996年夏に全券種の改訂をした。その絵柄に共通する特徴は次の通り。
 @民族衣装を着たガンジー(Mahatma Gandhi 1869-1948)の肖像を表面右に配している。
 A左側下にはインドの国章であるライオンの石柱を配するが、此れはアショカ王の遺跡から発掘されたもの。前の紙幣はライオン像が表面右に大きく、また透かしにも使われていた。
 B中央上に、インド準備銀行の表示と、「中央政府により保証される」と英語とヒンズー語で記されている。
 Cその下には、「私は50ルピーをこの札の持参人に支払う」の言葉と、総裁(B.ジャラン)のサインが、やはり英語とヒンズー語で記されている。
 D裏面左端に15の言語で50ルピーと記されている。ベンガル、アッサム、グジャラート、カンナダ、カシミール、マラヤラム、マラティ、オリヤ、パンジャブ、サンスクリット、タミール、テルグ、ウルドゥーなど各州に対応しており、最も一般的なヒンズー語と英語は紙幣の各部分で使われている。計17の言語がインドの公用語である。


・裏面中央部にはインドに馴染みの絵が其々描かれており、E新50ルピーは旧50ルピーと同様に国会議事堂の建物で中央にインド国旗が掲揚されている。
・F10ルピーはインドの動物として、サイ、ゾウ、トラであり、G100ルピーはヒマラヤ山系のうち、シッキム地方にある標高8586mのカンチェンジュンガ山である。
・以下、偽造防止手法による印刷だが、H表面中央部はドライオフセットによるレリーフ模様で、浮き出た表現となっている。また10ルピーを除いて数字の部分などで3色凹版によるザンメル印刷が為され、画線の途中から色を変えている。


・I表裏共にドライオフセット印刷は各3版7色であり、版の組み合わせと色の混ざりによりレインボー印刷としている。
・J透かし(ウォーターマーク)はガンジーとなっている。この部分は一見して淡い色に見えるが、細かく斜めに角度が異なる平行線印刷の組み合わせにしているので、偽造時の僅かなズレも分かるになっている。
・K100の字の下の部分はコピー防止用潜像凹版印刷で、コピー機光源の波長が自然光と違う事によって100の文字が浮き出て来る。また中間調の部分はマイクロ文字印刷になっていて、RBIの文字が英語とヒンズー語とで描かれている。
・L記番号とナンバーはインド紙幣専用のフォントで蛍光剤が入っているので暗い部屋で紫外線を当てるとピンクっぽく光る。このRの文字は版記号で、3記番号+6番号が一回りして次のアルファベットとなるが、無ABCD、EFGHK、LMNPQ、RSTUVの5つずつ、ナシック工場、ディワス工場、マイソール工場、サルボニ工場と割り当てられている。
・M>変形丸型模様は表裏刷り合わせ模様で、両面同時印刷機ならではの精度で裏おもての位置が合っている。その下の▲は盲人用識別マークで凹版インキにより少し盛り上がっている。
・N100ルピーでガンジー肖像の左は「窓開き文字入りスレッド」でRBIの文字が英語とヒンズー語とでマイクロ印刷されている。また紫外線により青白く蛍光を発生する。100ルピー外は窓開きでなく、中に埋め込まれている。
・O50ルピー、100ルピーの表面はドライオフセット印刷による地紋と凹版印刷で刷られ、裏面はドライオフセットのみだが、10ルピー紙幣は表裏共にドライオフセットのみで刷っている。ガンジー肖像の部分は「偽似凹版印刷」とし、一見して凹版印刷に見えるが並べて比べるとシャープさが違う。日本貨幣商業協同組合発行「世界の通貨ニュース第13号」によると、マイソール工場でジオリ社機で刷られた10ルピーより、サルボニ工場で小森機で刷られた10ルピーは、色彩が鮮やかでシャープな印刷と評している。


《紙幣の材料》
 

・インド紙幣の用紙はイギリスのポータルス社から購入しており、券種別にドイツ、ポーランドなどヨーロッパ各地の製紙工場から入る。裏側のプラットホームからコンベアーで巨大な自動倉庫に入るが、此所には1年分の用紙ストックが出来るとされているから、約50億ノート分、シートにして1億枚、1万リューベの容量となる。
・南側から自走車で取り出して印刷室に回す予定となっているが、2000年2月現在で未だ自動倉庫は完成していなかった。
・この写真は500枚ずつクラフト紙で梱包された10ルピー用紙のラベルで、用紙サイズ、ロットナンバー等が記されている。
・インド紙幣のインキはジオリグループのシクパ社より購入している。写真の(フラオ)黄色インキは、10ルピーの表面第2版用。


《印刷版とローラーの製造》

・紙幣用の版としては、先ず原画に基づき地紋用の原版と肖像等の部分を彫刻した凹版用原版が作られる。凹版の原版より母型が作られ更に紙幣一枚分ずつの版を大判の大きさに集合(溶接)して凹版印刷用の版となる。サルボニ工場では地紋用のドライオフセット版と、凹版印刷用の版を作っている。
・この部屋は原版から印刷用の版にレイアウトをする工程の部屋
・この部屋は電触(メッキ)工程の部屋
・凹版印刷は彫刻された溝の部分を絵柄とするので、絵柄の部分だけインキを付ける為に着肉(朱肉と言う言葉があるように、肉はインキのこと)パターンローラも絵柄に相当して凹凸がある。このパターンローラとワイピングローラ(溝の外側に付いたインキを取り去る)もサルボニ工場で作っている。
・ローラ表面と側面加工の旋盤は客先手配のインド製だった。(チャッキング不具合でワイピングローラの側面加工ムラがあり、ワイピング液飛散問題があった)


《地紋の印刷》

・ドライオフセット印刷機のドライとは水を使わない樹脂凸版を意味し、オフセットとは版面のインキを一旦ゴム・ブランケット胴にオフして、紙にセットすることから来ている。インド紙幣は表裏とも各4版で、インキは7種類位で刷られている。例えば10ルピーの表面は、Dark Brown, Flaorescent Yellow, Light Violet, Bluish Red, Greenish Yellow, Orangish Red, Light Brown の7色となっている。一つの版で最大4色まで刷れるのでインキ同士が部分的に混ざってレインボー印刷となる。
・ドライオフセット印刷機は上部から給紙し、両面を同時に印刷出来る大型機で、2連の排紙装置などにより、ノンストップ印刷が可能となっている。サルボニ工場では実働7時間で1日5万枚以上をキープしている。今までの最高は65500枚だった。
・刷り終わると必ずカウントが行われ、出庫用紙枚数との照合が行われる。この員数チェックは最終工程まで工程毎に厳しく何度も何度も繰り返される。


《凹版印刷》

・10ルピーを除いて表面に凹版印刷がされる。凹版印刷機は一種類の版に3色印刷される大型機で、画線の途中から色が変わるザンメル印刷となる。この機械もノンストップ印刷が可能で、今までの最高記録は51500枚となっている。
・凹版印刷では紙に転写されるインキの倍以上が捨てられるが、その廃インキ処理の設備は化学プラントそのものとなっている。インキ顔料前処理で顆粒状にされ、フィルタープレス装置で最終的にはカーボン状の粉となる。また溶媒部分は乾燥されて工業塩となる。乾燥用熱風発生のボイラーは数少ないインドでの調達品だが、やはり問題が色々と出た。


《ナンバー印刷と仕上げ》

・表裏とも地紋と凹版の印刷が終わると大判カラー検査で4種類(AG,SC,HSC,spoil)に振り分けられる。AllGoodと不良部分の少ないSC紙は次の工程としてスパンス(SPaNS)方式と言うインド独特の字輪配列のナンバリングボックス搭載ナンバー印刷機でナンバーが打たれる。この機械もノンストップ印刷可能で、今までの最高記録は61000枚である。
・ナンバー印字後に更にクォリティ検査があり、差し替えを必要とする部分の透かしの所にクレヨンマークをし、そのナンバーをリストアップするが、AG紙はナンバー印刷時の工程内検査だけとしている関係で、クォリティ検査員は少ない。
・40面又は50面の大判でナンバー印刷された用紙は全て100枚毎に仕上機に掛けられるが、クオリティ検査で差し替え必要とされた紙幣分は、HSC紙(大判カラー検査で不良部分が多いとされた)を使ってシングルナンバー印刷機で補刷される。


《サルベージ》


・補刷の工程がサルベージ・セクションに掲示されていた。HSC紙(ナンバー印刷前)には20%前後の不良が含まれるが、その大判HSC紙はギロチン断裁機で小切れにされ、クレヨンマークをソーティングマシンが読み取って自動振り分けをする。
・地紋が正しく印刷された小切れ用紙だけがシングルノートランダムナンバー印刷機(SNRN)に掛けられる。電子ナンバリングユニットには小さいサーボモータが組み込まれていて、ランダムにナンバーを毎時15000枚で印刷>出来る。そして100枚単位のパケットとして排紙する。 ・インド紙幣は1000000枚を単位として記番号(プリフィックス)毎に作られているが、000000番は無く、000001番から始まるので1000000番が必要となっている。これはサルベージ室の手前側に見えるハンドプリンターにより、特別に作られる。つまり通常は3桁のプリフィックスと6桁の番号だが、1000000枚に1枚は10桁の紙幣がある。
・仕上機後に必要な差し替えを済ませて1000枚単位でラップされた札束(バンドル)は10万枚毎に箱詰めされ、製品倉庫に保管される。そして月に2回、プラットホームから4両編成の特別車両で出荷される。前後の車両に各10名ほどで重装備のCISFメンバーが警護に付く。
・大判カラー検査でのspoil用紙と、クオリティ検査でクレヨンマークされた紙幣(フロードノート)はクスタ機に入れられ、粉砕圧縮の上で、薄皮饅頭大の塊となってプラットホームから外へ運ばれる。捨てられる用紙は1%以内を確実にキープしている。