インドからだよ〜ん-U |
鍵騒動
拝啓セクレタリ殿
此処のゲストハウスの設備は形だけはホテル並みに揃えようとしているのだけれど、
一つ一つを取り上げるドミトリー(寮)並みです。
だからそのつもりで生活していて、しっぺ返しを食うのがオートロックの鍵なので
す。
昨年末に、使い古しの紙幣を処理する機械のイギリス人技術者が泊っていました。
我々が仕事から帰って部屋に入ろうとした所、その人が湯上がりタオル一枚で廊下を
うろうろしているのでびっくりしたものです。
何と、シャワー中に「電話だよー!」と言われて飛び出した迄は良かったが、そこで
オートロックでシャットアウト。
タオル一枚の哀れな姿となった次第です。
その彼が夕食でダンディな格好でさっそう颯爽と階段を降りて来た所を相原さん、
「似合うじゃないか、タオルよりはねぇ」
ドライオフセット印刷機のゴミ問題で大活躍の大西さんもシャットアウトされた一人
です。
大西さんがゲストハウスへ到着した当日のこと、夕食後まだ皆で歓談中に大西さん
(69歳)がパジャマ姿でおっとり刀風に小走りで食堂に入ってくるなり、「入れな
くなっちゃった」。
何故部屋を出てしまったか聞き漏らしてしまったけれど、門番に言って鍵を管理して
いるBRB(紙幣印刷会社)の掃除人のボスが来るまで約30分、お疲れの所を大変
でしたね大西さん。
朝の出勤時に鍵を持たずに工場へ行ってしまったのが宇野製作所のトモダ君。
掃除人のボスが中々見つからなかった為に、仕事が終わってから2時間程も部屋に入
れませんでした。
本人の不注意は無いのに部屋へ入れなくなったのが、宇野製作所の吉田課長。
そもそもはマークブラウンが加害者だったのだけれど、彼がゲストハウスを出てイギ
リスへ去るのに鍵を持ち帰ったのか、誰かに渡したのか、何れにしてもその後は鍵が
無くなってしまいました。
仕方なくスペアキーで吉田課長が使っていたのだけれど、何時シャットアウトされる
か判らないからと、BRBのビスワナタンに合鍵を作って貰うようにしていました。
その間に部屋はオープン状態で固定していたのだけれど、掃除人のボスがそれを解除
してしまったものだから、住人の吉田課長自身が入れなくなっ
てしまった訳です。
ロックされたのが昼休みに気が付いたので午後にビスワナタンから鍵を返して貰い、
事無きを得たのでした。
その合鍵製作ですが、BRBでは手作業で鍵を作るしかなく、一見してこれでは駄目
だろうとの鍵しか出来ません。
実際に出来たものは案の定駄目です。
もう一度トライして作ったがやはり駄目。
何度トライしても駄目だろうと、EAPL(我々が雇っているインドの会社)のヤ
ショダールに頼んでカラグプル市で作ってようやくスペアキーが出来ました。
人騒がせで迷惑なマークブラウンです。
鍵となると、もう一度大西さんに登場願わなければなりません。
帰国前日の夕食後のこと。
土産を買うなどでインド・ルピーが必要になるなら両替するよとの事で、食堂から部
屋へ戻った大西さんが中々戻って来ません。
おかしいなぁー、部屋へ入れなくなたのなら直ぐに戻って来る筈なのだがと、待てど
暮らせど来ません。
やっと来たと思ったら「机の引き出しの鍵が無くなっちゃった」。
またですか、大西さん。
お歳のせいですかねぇ。
「さっきも無くしちゃって、ヘモント(コック助手)が拾っていてくれたのだけれ
ど、また無くしちゃった」と、ヘモントにもう一度聞いたが、そんな
に彼も大西さんの後ばかり鍵拾いに歩いている訳ではありません。
「おかしいなぁー」、と食堂を出たロビーの所で大西さん、「あったー」。
何とヘモントが拾った所にまた落としていたのでした。
「大西さん!ズボンに穴が空いているのでしょう?」
敬具 1997.3.10